サナエトンボ科  ヒメクロサナエ(姫黒早苗)

 昨年(2018年)は4月28日に羽化間もないヒメクロサナエ(姫黒早苗)を見た。今年も、山地に通いながら、気にして見ていたのだが、4月中旬までの低温が影響してか山地の春は遅く、ヒメクロサナエは姿を現さなかった。
 ヒメクロサナエの幼虫は2年で成虫になるとのこと。今年は外れかと思い始めた頃、5月4日になって羽化途中と羽化直後の個体を見ることができた。

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画像 1 羽化途中のヒメクロサナエ 翅と腹部を伸ばしている  


 いつもなら下流から入るのだが、この日はヒメクロサナエの諦めの気持ちもあり、また、別の目的もあったので上流に回りこんだ。
 別の目的は期待外れだったが、沢に降りたら羽化殻が眼についた。そして、羽化殻の近くに羽化失敗と直感した個体もあった(画像 1 )。4月にダビドサナエ(だびど早苗)の羽化不全や羽化失敗の個体を沢山見たので、画像 1 を初見した時に羽化失敗と直感してしまった。

 しかし、羽化失敗との直感は外れていた。薄暗い沢の中で羽化失敗に見えたがファインダを覗くと、羽化途中であることに気付いた。初めは、脱皮には成功したが、翅が伸びずに羽化不全ではないかと思ったのだが、己の羽化殻につかまって翅を延ばしているところだった。

 この日は既にヒメクロサナエは諦めていたのだが、行き掛けの駄賃的に観察が始まった。


 2019年の初見9種目は、
ヒメクロサナエ Lanthus fujiacus (Fraser, 1936) (* 1 )
不均翅亜目(トンボ亜目) サナエトンボ科 ヒメクロサナエ属
漢字表記 姫黒早苗

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画像 2 羽化後初飛行の準備 雄だった    


 羽化途中からの観察であったが、初飛行まで記録したくて、1時間以上粘った。しかし、カメラのバッファが足らないのか初飛行の瞬間は写っていなかった。画像 2 のコマが最後に記録された画像だった。
 足場の悪い場所にしゃがみ込んで欲で粘ったが最後の初飛行の瞬間が写っておらず、ファインダに集中していたので蜻蛉の行き先は全く不明だった。
 
 この羽化途中の個体を観察中に、腹部背面が虎縞に見えたトンボが悠然と私の脇を通過した。彼のトンボは上流方向に行ったので、戻りが確認できるかと思ったが、ヒメクロサナエの観察を続けたので、その後は未確認になってしまった。

 そして、観察を続けたヒメクロサナエが初飛行で姿を消し羽化殻だけが残った。そこで上流を覗いてみた。この上流は過去に偵察して、暗いだけで足場も悪く観察に適さない場所として判断して、覗くことのない場所だった。
 久々に遡ってみたが確かに暗く、足場も悪かった。それでも頭部が脱皮できないままの羽化失敗の亡骸と正常な羽化殻が見えた。いずれも、ヒメクロサナエだった。
 また、羽化失敗の亡骸と羽化殻は普段なら見えなかったかもしれないが、直前まで薄暗い場所に1時間以上いたので眼が慣れていたので見えたのかもしれない。

 
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画像 3 羽化直後のヒメクロサナエ 雄    


 腹も減っていたので開けた場所に出た。すると、羽化直後のヒメクロサナエの雄がいた(画像 3 )。この雄を見つけた時は先ほどの個体ではないだろうかと思った。逃げないので、よく眺めると翅が濡れているためか飛べないでいた。さらに眺めると、水際に羽化殻を発見(画像 4 赤色矢印)。
 羽化後、開翅時に流れの飛沫に当たってしまったのだろうか。近くに羽化殻あったことで、薄暗い場所で羽化した個体とは別個体であると推測した。


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画像 4 羽化直後のヒメクロサナエ 雄 下方に羽化殻   


 途中から羽化過程を観察した個体は薄暗い場所で踏み潰されても仕方ないような場所だった。2番目の翅が濡れているため飛べない個体はいつもなら最初に覗く明るい場所で羽化していた。
 観察運の分かれ目が何処かにあったようだ。


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画像 5 羽化途中のヒメクロサナエ 肛門水滴下中  


 ところで、画像 5 は羽化の経過を観察した個体だが、しきりに肛門水を滴下していたので記録した画像の1枚。撮影のタイミングで小さな水球にしか写らなかった。
 肛門水の水球は羽化直後の他種で何例か目撃しているが呼称を知らなかった。偶然に「肛門水」を5月4日に知ったので、ヒメクロサナエの記事に記しておくことにした。
 羽化の終盤に腹部が伸びると、余分な水分が対外に排出される。これを肛門水と呼ぶそうだ。




   ---   * 1   (Fraser, 1936)
 Frederic Charles Fraser(フレデリック・チャールズ・フレイザー)、トンボ目専門のイギリスの 昆虫学者。1963死亡。
 参考 Frederic Charles Fraser (15 February 1880, in Woolwich – 2 March 1963, in Linwood was an English entomologist who specialised in Odonata.(https://en.wikipedia.org/wiki/Frederic_Charles_Fraser

 調べていて面白いことに気付いた。
クロサナエ Davidius fujiama Fraser, 1936
ヒメクロサナエ Lanthus fujiacus (Fraser, 1936) 
 クロサナエ(ダビドサナエ属)、ヒメクロサナエともに日本固有種だが、どのような経緯でFraserさんが命名者になったのだろうか。クロサナエの種小名 fujiama。ヒメクロサナエの種小名は fujiacus。種小名は富士山(ふじやま)に関係ありそうである。





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