サナエトンボ科 ダビドサナエ(だびど早苗)

 ダビドサナエ(だびど早苗)はサナエトンボ科のダビドサナエ属の蜻蛉。日本特産種で、河川の中流域から上流域まで普通に見られるという。
 確かに川筋では、春から初夏にかけて、雌を待つ雄の姿が見られる。体長50mmほどの小さな早苗蜻蛉だが、眼が慣れればあちこちの石の上などに姿が見えてくる。

 この地でサナエトンボ科の蜻蛉が何種類見られるかは不明だが、ダビドサナエが一番早く登場するようである。
 2018年は、4月22日が初見で、6月24日が終見だった。そして、2019年の初見日は4月5日となった。それは、羽化間もない雄との出遭いであった。


画像

画像 1 翅を閉じて止まるダビドサナエ 羽化間もない雄   


 2019年4月5日、流水の畔を均翅亜目の蜻蛉の姿をためながらゆっくりと歩き出したら途端に1匹の不均翅亜目の蜻蛉が飛び立った。
 均翅亜目の蜻蛉の姿を求めていたのに、不意に不均翅亜目の蜻蛉が飛び立ったので、予想外のことで驚いてしまった。
 前年の4月、この場所では、いの一番に均翅亜目の蜻蛉を観察した。それで、今年も均翅亜目と思い込んでいた。
 そんな思い込みで蜻蛉の姿を探していたので予想外の出現に驚いてしまったのである。

 それでも飛び去る姿を眼で追うことが出来た。不均翅亜目の蜻蛉は、流れの対岸のオギ(荻)の枯れ茎に隠れるように止まった。
 期日が早いので未知の蜻蛉ではないかとわくわくしながら追いかけることにした。ところが、この日はまだ長靴でなかったので、すんなりと対岸に渡る訳には行かなかった。

 どうにか靴を濡らさずに対岸に渡りオギの枯れ茎を眺めた。眺め始めて間もなく異様な姿の蜻蛉の姿を確認した(画像 1 )。不均翅亜目の蜻蛉が翅を閉じて止まっていたのでことさら異様に思えたのであった。
 ファインダ越しに眺めて、翅を閉じて止まっていることと、体色から羽化間もない個体であること。それと、雄(♂)であることは判った。そして、後脚の腿節(たいせつ)の長さから早苗蜻蛉の仲間と想像した。
 さらに、腹端の形状と、胸部側面の模様はダビドサナエの雰囲気があった。ただ、腹部全体が太いままなのが疑問だった。
 疑問は残ったが、季節と場所から、ダビドサナエであろうと思った。
 
 2019年の初蜻蛉、初目測は体長55mm程度。撮影時刻の気温は22℃。長靴を履いていればもう少し回り込んでの横姿が撮れたのだが残念であった。
 念のため胸部背面を記録しようと動き始めたら、タチヤナギ(立柳)の樹上に逃げられてしまった。
 ダビドサナエの♂の全長は43~51mmということになっているので、初目測は外れだった。腹部の太さに惑わされてしまった感もある。


画像

画像 2 ダビドサナエ 羽化殻   


 蜻蛉に逃げられてしまったので、元の岸に戻り、初めに飛び立った辺りを眺めてみたら羽化殻(うかかく)があった。

 羽化間もない未成熟成虫と羽化殻。春の蜻蛉が始まったばかりで、今までに他種の不均翅亜目は見ていないので、成虫と羽化殻は同一種のものと思われた。

 しかし、20mmほどの羽化殻は私の眼には小さすぎるので、青木典司(あおきたかし)さんの運営しているサイト、「神戸のトンボ」の掲示板「神戸のトンボ広場」で尋ねてみた。
 管理者さんから直ぐに回答を頂いて、成虫はダビドサナエ。羽化殻に関しては、ダビドサナエ属の羽化殻や幼虫は、手元に標本があっても誤同定するくらい似ているとのことで、羽化殻は判別不能とのことだった。

 回答に『そちらはモイワサナエが分布すると思いますので、区別が難しいです』ともあった。
 確かに、この県域では、モイワサナエ(藻岩早苗) Davidius moiwanus moiwanus が分布することになっている (* 1 )。ただ、モイワサナエのことは別の話になってしまうのでこの稿では触れない。
 いずれにしても、この季節、この地でダビドサナエ属といえばダビドサナエだけ。それなので、羽化殻もダビドサナエのもと一件落着した。


画像

画像 3 ダビドサナエ 雄   


 画像 3 は成熟したダビドサナエの雄。2018年5月5日、樹上から下りて雌待ちを始めたところである。
 成熟した個体は羽化間もない未成熟な姿と比べると、身もしまり、小さいながらも精悍そうな姿である。画像 1 の姿がしまりがないので参考までに貼っておくことにした。
 この画像、うまい具合にダビドサナエの同定ポイントも写っている。ダビドサナエの同定については別の記事に記しておこうと思っている。


 2019年の初見1種目は、
ダビドサナエ(だびど早苗) (* 2 )
不均翅亜目(トンボ亜目) サナエトンボ科  ダビドサナエ属
Davidius nanus (Selys, 1869) (* 3 )

   ---
 この流水に何種類の幼虫が潜んでいるかは知らないが、この日のお目当ては、ニホンカワトンボ(日本川蜻蛉)だった。
 ニホンカワトンボの姿は見出せなかったが、羽化間もないダビドサナエを見ることができて、大満足であった。

 ウグイス(鶯)の鳴くのを聴きながらの観察と、逃げた先のタチヤナギの若葉色が印象的で、思わす、「眼に若葉、川ウグイスに初トンボ」 と、もじりの一句をひねってしまった。
 多種の樹木が芽吹きだしていたが、若葉が出ているのはタチヤナギだけだった。それと、数羽のウグイスの「法、法華経」が耳に響いていた。




   ---   * 1
文中でモイワサナエ(藻岩早苗) Davidius moiwanus moiwanusが登場したが、モイワ(藻岩)は北海道・札幌の藻岩山に因む。北海道では極普通に見られるという。

   ---   * 2
 カタカナ表記の和名を補助するため漢字表記がある。ところがダビドサナエは漢字がなく「だびど早苗」と表すのが一般的なようだ。
 この稿では詳細について触れないが、フランスのアルマン・ダヴィド(Armand David)さん(7 September 1826, Espelette – 10 November 1900, Paris)に因む和名なので適当な漢字がないようである。

   ---   * 3
 学名の命名(登録)者のセリ(Selys)さんは「蜻蛉の紀 2018」の「蝶を狙うコオニヤンマ」で少し触れておいた。





ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック