ギンヤンマの受難

2018年9月17日、ギンヤンマ(銀蜻蜓)が防鳥ネットの餌食になっていた。
防鳥ネットは、田圃(たんぼ)の稲をスズメ(雀)などの鳥から守る目的で張ってある網である。
イネ(稲)の花の咲く直前辺りから田圃に設置するようである。

イネの花の咲く頃によく見かける光景だが、知恵のあるスズメたちは網と網の隙間から潜り込んで、適当にイネの花を食っている。
この防鳥ネットにスズメの数倍ある鳥の死骸があるのはたまに見かけることがある。
秋口によく見かけるのは網から出ようとあちこちに体当たりしているオニヤンマ(鬼蜻蜓)。それと、力尽きて息絶えたオニヤンマの死骸。
稲を守る防鳥ネットというが、昆虫をいじめるネットとしては効果は絶大のようである。


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画像 1 防鳥ネットの餌食になったギンヤンマ  


そんな田圃の防鳥ネットにギンヤンマが掛かっているのを見てしまった。
道草になるのは分かっていたが、撮影と救出をした。ギンヤンマはメスだった。
畦からどうにか届く位置だったので救出してみたが、既に虫の息だった。腹部が動いたのでどうにかなるかと思い草につかまらせたが落ちてしまった。既に脚力はなくなっていた。
そして、気付けば、首もだめで頭部が振り子みたいに動く状態だった。


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画像 2 防鳥ネットの餌食になったギンヤンマのメス  


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画像 3 ギンヤンマ 下方から顔面  


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画像 4 ギンヤンマ 下方から全体 尾毛からメスと判る  


かわいそうだが、蘇生の可能性はないと思えた。そこで、供養の記録撮影をすることにした。
この場所では撮影しづらいので、第一目的地へ移動した。移動時間は1分足らずなので、ギンヤンマの翅を摘まんで移動した。

台風や秋雨前線に苛まれる日々が続き、スポット天気予報ははずれが多かった。
この日も曇りで朝から北西風が吹く予報だったが、朝から晴れて、久々の洗濯日和になった。風は南風で爽やかだった。
目的地の池はギンヤンマのオスたちやショウジョウトンボ(猩猩蜻蛉)のオスたちで賑やかだった。
それでも蘇生の可能性はないと思えたギンヤンマをの記録撮影を優先しなければならなかった。もし、自宅に連れ戻れば、いつ記録撮影ができるか分からない現状が待っている。

しかし、現地撮影では予定外の時間を費やし、予定の観察時間が不足になるのは必至である。
いつものことだが、些細なことで葛藤し、結局は現地撮影となった。
ところが、風向きが南から東に変わり、更に北風となった。蜻蛉が飛ばされてしまうので、10円硬貨の重みを使っての撮影となった。

供養と思い、撮影の他に各部を採寸した。
その結果は、
    腹長 52mm
    全長 70mm
    後翅長 50mm
    前翅長 55mm程度(翅端の破損があり推定寸法となった)
だった。


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画像 5 胸側の殻内側に結露が見えた  


胸側の殻の内側に結露が見えたので、雨の降った前夜以前にはネットから抜け出られなくなっていたものと思われる。


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画像 6 腹端部側面。腹部第10節先端の尾毛が目立つ  


腹端部側面を撮影したが、兎の耳を逆さにしたような形状の尾毛が目立った。
赤色矢印の器官については文末に別記。


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画像 7 複眼が線状に近接している。ヤンマ科の特徴  


頭部が動いてしまう状態だったが、どうにか頭部正面(顔面)が撮れた。
複眼が線状に近接しているのが明瞭。これは、ヤンマ科の特徴のひとつである。
眉斑(びはん)については特徴になるかならないかは観察例が少ないので現状では不明。


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画像 8 産卵管などの産卵器官と尾毛他  


全ての器官の名称は知らないが、産卵管と、尾毛は写っていた。
産卵管は撮影角度を工夫しないと見づらいことが分かった。
腹部第10節先端の突起部(画像で尾毛の内側)の間が肛門の位置。
赤色矢印の器官については文末に別記。


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画像 9 ギンヤンマ♀の腹面  


腹面側の撮影は失敗だった。自分の体で影を作ったのだが、撮影時には体が動いてしまったらしい。
画像を見て、「銀ヤンマ」のいわれの腹部第3節の下面部をしっかりと撮っておくべきだったと後悔している。
ひいき目に見て、画像 5 の腹部第3節の下側が、どうにか銀色に写っていた。


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画像10 胸部背面。主に翅胸部  


翅胸背面は撮ったものの、各部の実際の詳細については知識がないので不明。
それでも、翅基部の構造物は長時間飛行が可能のような力強さを感じさせるものである。



しょっぱなから結構な道草を食ってしまったが、この日のお目当てのヒメアカネ(姫茜)は確認できた。さらに、リスアカネ(りす茜)も確認した。
2018年の初見順で、39種目がヒメアカネ。そして、40種目にリスアカネが加わった。
残念ながら、ギンヤンマはまだ記録がない。例年、連結産卵や、雌探しに疲れて一休みする雄などを記録しているが、今年はいまのところ画像の記録が撮れないでいる。
今年は、街中でも流水でも姿は見ているのだが、撮影となると縁がないようだ。

ところで、茜を2種記録できた帰路に田圃の別面の縁を通ったが、防鳥ネットにカブトムシが掛かっていた。
やはり、防鳥ネットは蜻蛉だけでなく、昆虫をいじめるネットとしては効果は絶大のようである。

なお、本文中の画像は全て同一個体のものである。



   ---   別記
画像 6 、画像 8 の赤色矢印について。
産卵器官を構成する部品のひとつで、産卵管小突起( stylus )と呼ばれる一対の器官。
産卵管を持つヤンマ科や、均翅亜目には存在するようで、産卵管のガイドをする役割があるよう。とのこと。
そして、触覚によって、産卵基質を調べているのではないかと思われとのこと。

以上は、蜻蛉の掲示板で教えていただいた。
掲示板は、青木典司(あおきたかし)さんの運営しているサイト「神戸のトンボ」の「神戸のトンボ広場」である。

stylus という器官名が解ったので、ちょっとWebで調べてみた。
和訳は出来ないが、例えば、 http://www.allodonata.com/search/?q=s:1110
Oligoaeschna foliacea (Lieftinck, 1968) という蜻蛉のページだが、
Bottom view of the terminal segments of an adult female Oligoaeschna foliacea.
(略)
4) Stylus - a pair of thin needle like stylus that serves as sensor in egg positioning;
(略)
という記述を見つけたりして愉しんでいる。




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