泥棒草たち

泥棒草(どろぼうぐさ)と呼ばれる植物たちがある。特定の植物の呼称でなく、果実を動物の体毛に付着して運んでもらう植物の総称である。十把一からげ(じゅっぱひとからげ)で泥棒草と呼ぶが、どこにでも生えているコセンダングサ(小栴檀草)や、ヒナタイノコヅチ(日向猪子槌)などが代表格でよく知られている。
果実の棘が銛状の鉤になっていたり、表面が粘ったりして、動物が通るのを待っている。泥棒草たちにとって運良く動物が通ると、動物の体毛に付着して運んでもらうことができる。そして、移動先で子孫を生やすことができる。
動物にただ乗りするわけだが、環境によって、野生獣・飼い犬・飼い猫・ヒト(人間)などが運搬役となる。ヒトの場合は屋外を裸で移動しないので、まとっている被服の繊維が体毛代わりになる。
Webの発達した現在は居ながらにして色々なことを調べることができる。Webでは、泥棒草のことを「ひっつき虫」と表現しているサイトもある。植物名は全国共通の標準和名があるが、泥棒草については十把一からげの総称なので、全国共通の呼称はないのかも知れない。

丘陵地帯の散歩で見られる泥棒草たちを記録しておこうと思う。
今回は、三つ辻の泥棒草たちを3種。

簡易舗装も終わり、ヒト臭さと獣臭さの境目に三つ辻がある。地形的に木々が迫っていないので、空が開け、明るい場所である。
この丘陵地帯への登路は何条もあるが、そのひとつの登路の三つ辻である。
通い始めて3年目になるが、一昨年も、昨年も、誰かが草を刈ってくれた。誰だか判らないが、土地所有者の方ではないかと思っている。
今年はまだ、草ぼうぼうの状態だ。現状ではチカラシバ(力芝)を踏み分けないと先へ進めない。
辻の路上に、ヤハズソウ(矢筈草)、ヌスビトハギ(盗人萩)、フジカンゾウ(藤甘草)。そして、チカラシバの草むらを抜けると、路上に、ノブキ(野蕗)、キンミズヒキ(金水引)と、フジカンゾウが繁茂している。

先ず、辻の路上の、ヌスビトハギと、フジカンゾウ。

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画像 1 ヌスビトハギ・若い果実と花 



ヌスビトハギ(盗人萩)
マメ科ヌスビトハギ属
Desmodium podocarpum subsp. oxyphyllum var. japonicum

ヌスビトハギは、花の形(蝶形花)と果実(節果)の形が、マメ科の植物であると物語っている。花は小さい。
学名から推測すると、古くからの自生種のようである。
果実は、画像 1のように、2節に分かれるのが標準。時々、3節のもある。1節のものもよく見かける。未確認だが、これは、2節のものの外側が落ちたものかも知れない。

今のところ、登場予定はないが、小節果の多い(3~6節)アレチヌスビトハギ(荒地盗人萩)という性質の悪い植物がある。何ゆえ性質が悪いのかというと、衣類に付着した際に、取り除くのが大変だからである。
アレチヌスビトハギに比べると、ヌスビトハギの果実はやや膨らみがあるので、衣類に付着した際に、取り除くが若干楽である。


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画像 2 フジカンゾウ・若い果実と花 



フジカンゾウ(藤甘草)
マメ科ヌスビトハギ属
Desmodium oldhamii

フジカンゾウも、花の形(蝶形花)と果実(節果)の形が、マメ科の植物であると物語っている。フジカンゾウの「フジ」は、花の色が、フジ(藤)の花を連想させるためだろうか。
学名の属名が、「Desmodium」で、ヌスビトハギと同じである。ヌスビトハギと同じヌスビトハギ属である。ヌスビトハギと比べると、見た目は、草丈も高く、花も大きいが、葉の違いが顕著である。
葉は、三出複葉ではなく、奇数羽状複葉で2~3対。ヌスビトハギの小葉が3枚に対して、フジカンゾウは小葉が5~7枚となる。


次に、チカラシバの草むらを踏み抜けると待っている、木陰の路上のノブキ。

画像

画像 3 ノブキ・若い果実  



ノブキ(野蕗)
キク科ノブキ属
Adenocaulon himalaicum

果実が人獣により短距離移動するのか、観察3年目には、足の踏み場もないほど増えて、生育範囲が広がっている。
1株を撮影するためには数株を踏み潰さなければならない現状である。
踏まれていない状況から推察すると、この時期、歩くヒトがいないのかも知れない。9月は観察に3回訪れたが、出くわしたのはイノシシ(猪)だけ。もっとも、臭いのきつい人糞(野糞)を見ているので、まったくヒトが入っていない訳でもない。


画像

画像 4 ノブキ・参考画像  



画像 4を見ると、ノブキの雌花は子房下位のようだ。腺毛のある子房の先に花が咲いている様子が写っている。結実後、この子房が、そのまま、棍棒(こんぼう)状と称される果実になるのであろう。

2013年9月の日曜散歩から


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今回、ヌスビトハギと、フジカンゾウ。そして、ノブキの3種を記録した。
ヌスビトハギは、学名(Desmodium podocarpum subsp. oxyphyllum var. japonicum)から推測すると、古くからの自生種のようである。と、推測に基づいて述べたが、自生(野生)範囲を調べていて面白いことに気付いた。
自生範囲は、フジカンゾウ、ノブキと、共通する地域だった。海外では、大陸(中国)、朝鮮半島それと、台湾などである。
1万年ほど前から遡って、日本列島が大陸と陸続きであった時期があったことが知られている。台湾も大陸と陸続きであった時期がある。日本列島と台湾が大陸と陸続きであった時期に、ナウマンゾウが来たらしい。大陸、朝鮮半島、台湾、そして、現在の日本でナウマンゾウの化石が発見されている。
そして、ヌスビトハギと、フジカンゾウ、ノブキの3種の自生(野生)地も大陸、朝鮮半島、台湾、そして、日本などである。

ヌスビトハギ、フジカンゾウ、ノブキの3種の原産地は定かではないが、1万年以上前の東アジア大陸であったことは間違いないと思う。現在の台湾にも、日本にも野生しているのは、夫々が、大陸と陸続きだったことの証明のひとつであろう。
日本には、きっと、1万年ほど前までに、長い年月をかけて運ばれてきたことと思う。もしかして、もう少し遡った年代には、ナウマンゾウも、泥棒草たちの運び役だったのかも知れない。


いずれにしても、ヌスビトハギ、フジカンゾウ、ノブキの3種は、少なくとも、現在の島国(列島)になる1万年以上前から、この島国に自生していることになる。
フジカンゾウは北海道に自生(野生)がないようなので、フジカンゾウが延々と移動してきたときには、現在の津軽海峡は渡れなかったものと思われる。

ヌスビトハギの学名から推測が始まり、想像・妄想が、1万年以上前まで遡ってしまった。話がとりとめもなく逸れてしまいそうなので筆を置くことにする。

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